決済方法の影響

投稿者: | 2010年5月28日

iPadの日本発売で全国ニュースや地方ニュースが賑わっていた。
 iPadに関して、電子書籍リーダーという位置づけだけ?という紹介もあったが、iPhoneの大型判という見方もできるし、机上のフォトビューワーという使い方もあるだろうし、使い手の考え方次第な面だと思っている。
 とは言え、電子書籍リーダーとしてのiPadには大いに関心がある。有名どころとしてAmazonのKindle(ハードウエア)が先行していたのが、iPad向けにもソフトウエアとして提供された。Kindleはあまり振るわないとも聞くが、iPadの行列のニュースなどを見ていると、これをきっかけに、電子書籍が日本でも一気に普及していくのかもしれない。
 ただ、その時に気になるのが決済方法。大学の予算で書籍を購入する時のことを考えると、何だかなぁ、将来不安、という印象を持っている。
 大学の予算で書籍を購入する場合、基本的に自分の財布で決済するわけではない。むしろ、自分の財布で決済しておいて、後日大学と自分とで精算というような方法は、一部の特例を除いて基本的にはできない。例えば図書館に発注して図書館が精算するか、自分が発注だけをして図書館が精算する。いずれも本屋さんへの支払は後払いになっているようだ(私立大学では違う方法もあるだろうし、国公立大学でも大学によっては考え方が違うかもしれないが)。
 要するに、自分でクレジット決済とか立替払いという支払方法が基本的に使えない。そうなると、電子書籍の購入というのには随分と障壁が高いように思う。この調子だと、電子書籍は自腹で買うことになってしまいそうだ。
 ただ、こういう仕掛けを続けていくことには、将来的にもある程度意味があるかもしれない。大学の予算で書籍を購入する場合、短期的な使命を持った本が消耗品となる以外は、基本的に資産扱いとなる。自分以外のほとんど誰も読まないような本も図書館の所蔵になり、図書ラベルか付けられて、蔵書印も押される。研究室に並んでいる本も、全部図書館の所蔵。もし所属大学から転出したりする場合は、その大学に残して異動するか、転出大学に持って行っていいという許可を得ないといけない。
 その点、電子書籍になると、個人に帰属するという性質が強くなるんだろう。その人の端末に保存するんだろうし、誰かが貸し出してくれと言ってきても、「その本は自分のiPadに入っているから貸し出せないよ」となるんだろう。あるいは、大学図書館利用者の誰もが読める(貸し出せる)状態にしようとすると、電子書籍がどんな高価な存在になるんだろう、という不安もある。実は、一部の雑誌は電子ジャーナルと言って既に学内のネットを通じて入手するようになっている。専用リーダーが必要なわけではないし、PDFでダウンロードしたり、印刷したりできるので非常に便利。ただ、膨大な人が読める状態にするわけで、その契約はやはりかなり高価だと聞いている。
 そういう意味では、電子書籍が普及し始めても、電子版は私費でどうぞ、紙媒体やCD-ROMなら公費でも買えますけれども、となるのかもしれない。将来「この本は電子版しかありません」なんてことになってきたら考え方を変えざるを得ないんだろうけど、研究書でそういう時代が来るまでに何年かかるんだろう。意外と早いんだろうか。
 決済方法が仕事を縛る、というのは嫌い。会計手続きが仕事を縛るのも嫌い。ただ、民間企業でも同じようなことは起きているのだろう。経理がうるさいとか言って、嫌われる原因になるんだろうなぁ。


ちなみに、
 ある興味のあった本、アメリカのamazonで見てみると
ハードカバーで $16.86
ペーパーバックで $11.53
Kindle版では $11.99
ということで、ハードカバーよりは安いものの、ペーパー版よりは高かった。この本のタイトルは「The Cathedral and the Bazaar: Musings on Linux and Open Source by an Accidental Revolutionary」というもの。実は原著者のサイトで無料でほぼ全文のPDFを読むことができるし、日本語訳まである。