そういえば南予訪問調査でたびたび聴いて印象的だった言葉があります。
「マーケットイン」と「プロダクトアウト」。
マーケットインという言葉は例えば“@IT”の情報マネジメント辞典にも出ています。そこにはこんな風に書かれています。
- 製造業では長い間、「よい製品を作れば売れる」時代が続いた。1970年代半ばごろまでは日本経済は成長を続けており、その市場の欲求(需要)に合わせて、納期どおりに適正な品質の商品を適正な価格で提供することで成り立っていたのである。
しかし1970?80年代以降、市場の成熟化と大量生産技術の高度化により、さまざまな業界で供給過剰が見られるようになってきた。こうした「供給過剰型経済」においては、購買サイドが市場の主導権を握ることになる。
そこで購買者の視点、ニーズを重視することが提唱され、そうした発想を表す「マーケットイン」という言葉が登場した。一方、従来の供給者主導の発想・行動を「プロダクトアウト」という。
今回のヒアリングで聞かれた声を単純化していえば、第一次産業では未だにプロダクトアウトの発想でやっているから、これをマーケットインの発想に切り替えなければならない、という話。
実際のところ、プロダクトアウトの発想ってのは第一次産業に限らず、サービス業においてもよく見られます。例えば旧態依然としたバスの路線とかもそうでしょうか(例としては妙に偏ってますが)。地域独占で高価格でも乗らざるを得ない人を乗せている間はいいものの、長期的には結局クルマに客を取られて人があまり乗らなくなって不採算、そして高運賃になり悪循環。
でもふと考えてみると、元はといえばそもそも需要があったからこそ、その事業を始めたんじゃないのかなぁ。需要があったからこそ事業が起こり、順調にその事業が進む中で需要は次第に変化する。しかしそれに対応しない、妙に自信を持った保守的な体制のもとで殿様商売ができあがってしまい、挙句の果てに崩壊していく。
言いたいのは、「プロダクトアウト」っていうのは昔の人が持っていた古い発想、というものではなく、あるいは「マーケットイン」というのが目新しいすごい考え方なのではなく、つまりは時代の変化に柔軟に対応できる、変化を恐れない姿ってだけのことのような気がする。
その中で気になる存在なのが例えば農協。専門的に勉強したことがない未知の世界ですが、おそらく農協、卸売市場といった流通経路をたどることが農家を「プロダクトアウト」の発想にしてしまうと考えてる人も多いんじゃないかと。確かにこのような流通経路は「農家」と「消費者」の距離を遠くしている気もしますが、農協こそが変化し、その距離を縮めることに主体的に取り組み、また農協の下ででも農家間が競争する仕掛けを作ればいいんじゃないか、と。これ自体は例えばみかんの光センサー選果機の導入ではっきりと差が出る仕掛けらしく、結構変化している。
農協が農家のコンサルタントとして活躍する時代というのが過去にはあったんだし、引っ張っていける人が上に立てば変われるんじゃないのかな。
ま、これは素人としての意見であって、専門的な勉強を踏まえた話ではありません。全農と地方とのしがらみとか色々あるのかもしれませんが、そういうのも知りませんので。