センター試験、今年は制度が変わったこともあり、色んなトラブルがあったようで、色んな報道がなされている。私は立場としては中の人と言うことにもなるので、ミスをすれば批判を受けることも覚悟している。ただ、報道されている情報をもとに考えて、思うところが色々とある。
ツイッターでは14日、15日のセンター試験終了後、試験監督が無事終わったとかつぶやいている人もいたわけだが、終わった直後に無事だったなんて言えるはずがない。後から大学入試センターに苦情や申し出が出てくる可能性もあるわけで、オイオイ、と突っ込みたくなるところでもある。ちなみに、センターの試験監督を実施大学の教職員が担当していることはニュースでも流れていたので公表されているんだろうけど、私がいつ担当したとか、しなかったとか、そんな話を書くつもりはなく、以下は一般論として。それと、受験制度、特にセンター試験に関して完璧に把握しているわけではないので、申し訳ないが勘違いが含まれているかもしれない。
報道によると例年になく問題配布に関連したトラブルがあった様子。あってはならないことだし、現場で配布するのは教職員だから「○○大学では」という報道になるんだろうけど、批判の矛先がそこにばかり向くのはどうかと思う。事故や失敗があった時に末端を責めたり批判するのと同じことである。
センターなり共通一次を受けたことがあればわかるが、1日目の1つ目の受験科目といえば、写真票にシールを貼る(正しくは受験票の写真部分にシールを貼るとともに写真票を回収する)などの色んな作業がある。そして今回はカンニング対策の手順も追加されている。また1日目の最終科目にはリスニングがあって、監督者は相当なプレッシャーにさらされている。そんな状況下にある今回の1日目の1つ目の受験科目に、わざわざ地歴・公民を実施するというのは疑問。地歴・公民は2科目受験者と1科目受験者が登場し、問題冊子は指定された受験生に配布するなど複雑化している。こんな選択制の科目を1時限目に持ってきたのは、1科目受験生が寒空の下で無駄な待ち時間を過ごさなくて済むように、また静かな環境で受験できるように配慮したのかもしれない。が、どうしてヨリによって1日目の1時限目に複雑化した科目を実施するの?という疑問が残る。
それと、試験開始時刻を若干ズラしたケースも大変な問題のように報道されたが、正規の試験時間を確保することが最優先である。問題配布が完了しなければ開始時刻を遅らせると同時に終了時刻も遅らせるのが本則である。私自身も分、秒単位まで正確に実施できるように配慮しているが、試験室の状況によってある程度のズレは許容して貰わないと、特に今回の地歴・公民の状況を見る限り「明日は我が身」である。その上今回は問題訂正紙の配布などという本来ないはずの手順まで発生している。2分遅れでさえ指摘・報道される状況では、監督当日の朝になって腹痛で担当できなくなる人も出てきそうである。
そして、報道を通じて知る限り、今回の問題冊子配布ミスを極力ゼロに近づける方法なんてのは簡単で、問題冊子を地歴・公民の全部を綴じ込んだものにしてしまえばいい。解くべき教科は事前申請制のようだし、解く順番は本人が判断するわけだし、理科については1冊である。もちろん、センターの中の人もそういうことは考えたはずである。ただ、おそらくコストの問題と省資源化(紙の無駄遣い)の問題が理由になって却下されたんだろうと思う。そういう場合、配布ミスが生じる確率やそれによって生じるロスがどれくらい想定されるかとの兼ね合いだろう。そういう局面で、「人間はミスをするものである」という前提をどれくらい考慮してくれていたのか。そしてロスがどれだけ大きいと考えていたのか。受験生に与えた影響は甚大だろうと思う。
別冊子にしている科目というのは従来からある。例えば外国語には英語と英語以外があるし、数学には簿記などがある。ただ、これらの別冊子を使うケースは非常に限定的だし、別冊子自体を細々に分けたりはしていなかった。報道によると、残念ながら愛媛大では外国語の問題冊子の配布でミスがあったらしい。報道も混乱していて、”英語以外の外国語を選択した受験生に英語冊子を配布しなかった”という説明と”英語を選択した受験生に英語以外の冊子のみを配布した”という説明が混在している。後者が事実だとすると詫びようのないくらいのミスで非常に申し訳ないことだが、前者のようなミスだったとすると、この配布手順は必要なんだろうか。その手順がどうしても必要だというのなら、外国語も英語とそれ以外とを全部まとめて1冊にすれば同じミスは防ぐとこができる。
現場で受験生と向き合う責任者は大学教職員であって、苦情の矛先は当然そこに向かう。メディアの矛先もそこに向かいがちである。ただ、ミスをしないように受験生に迷惑がかからないように十分配慮している人が大多数だと思う。なぜそこでこれだけのミスが起きるのか、事故・失敗の分析として表面的ではない原因を調べて対策を講じていく必要があると思う。