書き換えて遊んでいただけだ

投稿者: | 2010年9月23日

大阪地検特捜部検事のFD改ざんが話題になっているわけですが、報道によると「わざわざ改ざんするわけがなく、書き換えて遊んでいただけだ」と話しているという。うーん、いくら何でも。
 そもそもの問題が起きた2004年時点でFDを利用していたことにも少々驚くが、FDならば書き込み禁止の爪があるじゃないか。USBメモリーなんかと違って、明示的に書き込み禁止にできるのだから、証拠となり得る人から預かった物品なら当然そうしておくものだと思う。学生さんから預かったFDを開くときなんかは当然そうしていた記憶がある。
 それから、この改ざん問題を上司に報告していたという点も、微妙に気になるところがある。問題を起こした検事は私と同年代。上司にあたる人々の世代は、場合によってはPC、ITに関する知識が乏しい人も居るので、そこにつけ込んで適当な報告をしたんじゃないか、ということも思い浮かぶ。「FDをPCに入れて中身を確認したらファイルの更新日時も変わっちゃいました」なんて報告しても、「それはおかしいんじゃないか?」と考えることができる人もいれば、「そう、勝手にそうなっちゃうのね。仕方ないね。」と言ってしまう人もいることだろう。
 さらに、どうやって更新日時を改ざんしたのか。昔ならPCの時刻設定を変えた上でファイルを操作するなんてことも考えたが、どうもそういうアプリをダウンロードして使ったようだから、言い逃れはできないと思うわけで。普通の使い方をして、仕事上、ファイルの更新日時を書き換える必要なんてないんですが、私の場合。
 もうひとつ疑問が残るのは、なぜ元に戻していないのか、ということ。ファイルの更新日時を書き換えることができる状態なのだから、元の日時に手動で書き戻すこともできるだろうのに(もちろんこれも正当化できないが)、改ざんした状態のままで当事者に返却している。このあたりは、改ざん後に再度その物品に触れることができなくなったといった状況の変化があったのかもしれないが、それにしてもお粗末きわまりない。
 証拠となりそうな物品に手を加えるというのは、遊びでもやってはいけないことだというのは当たり前。そんなことがあるのなら、我々の業界で言えば、採点前の入試の答案用紙に手を加えたり、判定会議の前に得点の集計表に手を加えたりすることと同等で、こんなことでは世の中の根本が歪んでしまう。答案用紙を前に消しゴムで遊んでいたら一部が消えてしまいました、なんてあり得ないだろう。社会システムの信頼性が揺らいでしまう。
 しかもそれが特定個人をおとしめるために行われているのだとしたら、ああ、何と情けない世の中というか、恐ろしい世の中なんだろう。まあ、世の中全般に、特にネット上で、個人をおとしめることを好む人が増えているような印象は持ちますけどね。