転校生 さよならあなた

投稿者: | 2007年8月4日

いよいよ今日から、松山で『転校生 さよならあなた』の上映が始まった。
 映画『転校生』というと、小林聡美さん、尾美としのりさんによる25年前の作品があった。当時リアルタイムのロードショーでは観なかったものの、大学生になってから、確か京都大学近くの京一会館か、八尾西武の大林映画の特集上映で何度となく観た。全体に白黒のイメージが強く残っていて、尾道の風景が非常に美しかった。使われている曲も耳馴染みのあるクラシックばかりで、最後の「さよなら、俺、さよなら、あたし」というフレーズとともに鮮明に記憶に焼き付いている。
 こちらは昔の「転校生」でふたりが転がった階段。
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 今回の『転校生 さよならあなた』というタイトルが示している通り、前作とは展開が異なることになる。と言っても途中までは全く同じ展開で、蓮佛美沙子さん、森田直幸さんの口から発せられるせりふも「ああ、あの時聞いたのと一緒だ!」という感動もある。展開がどう違うかは、追記に書くとして、前作と比べると遙かに「せつなさ」が増している。私自身の中では「はるか、ノスタルジー」とか「さびしんぼう」とかと一貫した印象。「はかなさ」「一期一会」「いとおしさ」「子供の世界、大人の世界」といったフレーズにつながるものを感じました。
 テレビでCMが流れたりとか、アイドル映画とか、いわゆる大ヒット映画、というパターンではないので、松山でもそんなに長い期間上映されない気がしますが、是非見ておきたい映画だと思いますよ。ま、おっさん化しているためにティーンエイジの心模様を描いた映画に弱くなったのかもしれませんが、是非学生さん世代の感想も聞いてみたいな、と。
 大街道シネマサンシャインにて上映中のようです。
以下はネタばれを含みますが・・・


 ここからネタばれも含むわけですが・・・
 ま、私にとってはこの映画はあまりにも共感、共鳴する部分が多すぎた。戸隠で蓮佛さんが歌うシーンの背景は、秋の信州の山々。何かすごくいとおしいような、高校生の頃に見た、懐かしい情景。そして、うちの奥さんは今年の1月から4月冒頭まで病院に入院して、面会のときもベッドに横になってたり、車いすに乗って。どうもその映像が後半の展開とダブってしまって・・・。
 という具合に、途中から前作と展開がガラッと変わるのは、斉藤一美(中身はカズオ)が難病になって入院生活になってしまう。最初私は、難病というのが男女の肉体が入れ替わってしまったことに起因する、現代医学、あるいは大人にはわからない状態のことを指して難病と言っていると思ったのだが、そうではなかった。そのために、前作とは違って随分とエンディングが悲しい。前作は斉藤一美がスキップし始めるところで、「彼女には彼女の新しい生活が始まる」「オレには引っ越した先での新しい生活が始まる」という、それぞれの前途への期待が描かれていたんですが。
 あと、ネットで読む限り「映像がずっと傾いていて見づらい」とかいう意見もあるようです。確かに途中で「あれ?」と。あれをテレビで見たらどうなんだろう、という感じもします。ただ、あれが展開にスピード感を与えているような気もします。
 そうそう、面白かったのは、まるで「転校生」の中に深町くん(『時をかける少女』の未来から来た人)が登場しているように見えた厚木拓郎さん演じる山本弘。『君のためにこそ死ねる』という言葉が後につながっていたわけですな。
 そういや大林映画というと、中には???なものも結構あったりするわけで。八尾西武で特集で上映されていた時には、自主上映作品のようなのもあって観たわけですが、夏になるとたまにCSでも放映される「HOUSE」とか、妙にオチャラケ過ぎたものもあって、何だかなあと感じるものも結構あるなあ、と。「HOUSE」は8月中にCSで流れるみたいです。ただ、その一方ですごく渋い映画もたくさんあって、柳川を舞台にした『廃市』というのは特にお気に入り。これがきっかけで福永武彦氏の小説をかなり読んだ、暗いっちゃあ暗い作品なんだけど。
 それで、こういうお気に入り映画を観た中で一貫していると思われるのがこんなフレーズ。
 「ひとはいつまでも夢の中に生き続けることはできないのだ」
私自身、大学生の時に「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作にはまり、まるでその世界の中に入り込んでしまったようなものだった。しかし、まさに「ひとはいつまでも夢の中に生き続けることはできないのだ」というフレーズに救われた気がする。映画館の中に入って、作品が上映される2時間ほどの間だけ夢の世界に入っていられるのだ、と。
 ま、そういう具合に考える中で、モラトリアムの世界から脱出したような気がします。逆にだからこそ、時々は映画館で映画を観て、モラトリアムもどきというか、夢の中というか、少年の世界に戻ることが許されるのかなあ、と。家のテレビじゃあ夢の世界じゃないですからね、映画館の暗闇の中でこそ、しばし別の世界に居られるようなもので。