図書館

投稿者: | 2012年5月11日

先日来、佐賀県武雄市の図書館運営の委託に関して問題指摘をする人がいる一方で、他方市長はその声を全く相手にすらしないような状況だった。最近、市長はブログでこの件に関して追加的に書いたようだが、問題指摘の本質的な部分については反応できていないように思う。このあたりの脈絡は私が変に解釈を与えるよりも、当事者間のtweetや関係者のブログなどを見た方がいいだろうと思う。
 さて、地元愛媛新聞の投書欄に武雄市の図書館運営の委託について非常に好意的に捉えた投書が掲載された。別に好意的に捉えることを否定するつもりはないし、この委託によってこの武雄市の図書館がどのようになり得るのかについて私自身も期待してみたいという意味で興味を持っている。
 指摘されている問題点は運営委託という全体のことではない。”先進的な取り組みに対して言いがかりを付けて潰しにかかっている”という見方で今回のことを捉えている人もtwitter等で見かけるが、先進的な取り組みだからといって後から出てくるであろう問題点に目を瞑れというのはおかしな話。むしろ問題点を先に掴んでつぶしながら進めていかないと、もしそれが先進的ないい取り組みであっても後にバッサリと切り落とされる可能性もあるわけだ。このあたりの考え方も人それぞれだとは思うけど。
 問題は貸出情報(借出情報)を誰がどのように扱うのか、という点にある。今回はTポイントカードが図書貸出カードとして導入されるような話になっていたと思う。ポイントも付くなんてラッキーという考え方もできる。ただ、それはつまり、Tポイントカードの情報として誰が何を借りたかも含めて取り込まれていくんじゃないかという想定につながる。まあその時点で「何を妄想してるんだ」というツッコミを入れる人もいるようだが、そのあたりは契約で詰めない限りどうにでもできるんだろう。
 そして、誰が何を借りたか程度の情報は別に外部に漏れても気にしない、という人もいるのは確かだ。私も普段別に気にしない。中には「借りた図書のタイトルを気にするなんて極端な思想の本ばかり借りるのか?」みたいなtweetもあったと思う。ただ、過去に面白いことがあった。職場では図書を公費で購入できるわけだが、ある教官(当時の呼び方)が『○○病の自己診断』というタイトルのものを買っていた。別にだからといってその教官が○○病だと決まるわけではないが、その人の研究・教育とこの本がどう関わりがあるのかも含めて非常に気になった。もちろん、こういう本を借りた人はそういう思想の持ち主だと決めつけたり、あるいは病気だと決めつけることは間違っている。ただ、こういうタイトルの本を借りたという事実をどこでどのように利用されるのかについては、借りる側で知ることができるべきだし、外部に知られずに済ます権利があっていいんじゃないかと思う。
 しかも今回の運営委託では貸出用のカードがTポイントカードのみになるような話も出ていたように記憶している。Tポイントカードというのは幅広い分野のお店で使えるわけで、逆にいえばTポイントの管理会社はカード所有者の購買等の情報について非常に広範囲のものを集めている。そこに借出情報を否応なしに追加できることになる。
 いい例え話ではないかもしれないが、こんなことを考えたりする。例えば市内各所の隅々の市道にNシステム導入して道路状況を把握し、渋滞緩和に役立てるプランが出たとしよう。公道なんだから把握されても仕方ないでしょ、とか、それで渋滞が緩和されるなら、という理由で、メリットも大きいのでと納得する人もいるかもしれない。しかし、どこそこに住む誰それさん所有のクルマが何時何分にどこを通過して、その所有者はどこのコンビニでどんなモノをどこで買っていて、なんて統合された情報を役所が把握していたら気持ち悪い。さらにその情報を実は委託業者が握るというのでは気持ち悪いと思うんだが。しかもその情報が蓄積されて、業者内部で利用され続ける。現行法で違法か合法かとか個人情報保護法云々というよりも、そこまでのプライバシーを誰かに掌握されても平気なんだろうか。はっきり言って「キモい」と思う。
 まあこれは専門的な立場から云々ではなく気持ちの問題として書いている。図書館の開館時間が長くなったり、お茶が飲めるスペースができたり、と面白い側面はいくつもあると思う。ただ、その面白い面の背後にどういう仕掛けが入る可能性があるのか、その仕掛けを含めないとこの委託が成立しないのか、そこも気にした方がいいと思う。